生命は驚きに満ちています。元は1個の細胞から多種多様な細胞が分化し、相互に絡み合って体を作り上げ、多少の環境変化にはびくともせず恒常性を示し、大きな環境変化には自らを変えて対応します。
このような驚くべき生命の仕組みは一体どう理解できるのでしょうか?
生命に必須な遺伝子の総体であるゲノムを中心に理解が進んでいます。ゲノムにはどの遺伝子を使うかラベルがつけられており、遺伝子の発現をオン、オフするスイッチの仕組み「エピジェネティクス」によって様々な細胞が生み出されます。私たちの経験や食生活、育ってきた環境の情報が「エピジェネティクス」によって遺伝子に記憶されることも分かってきています。再生医療の扉を開いたiPS細胞も細胞分化遺伝子記憶の消去によって作られます。
私たちはこうしたエピジェネティクスを研究し、遺伝子の記憶を改変することで疾患を治療し、体を改善するゲノム制御の基盤を作ることを目指しています。その一環としてエピゲノム操作技術の開発を進め、強力なツールである次世代シーケンサーを活用し、これまでにない疾患治療、健康増進への新しい可能性に挑戦しています。
また、私たち、記憶・学習、ストレス、不安、恐怖などに関わる神経科学的脳研究と新たな中枢性疾患治療法の開発も進めております。記憶学習およびストレスを含めた情動機能などのメカニズム解明に向けて、オプトジェネティクス、光ファイバーフォトメトリー、パッチクランプ、DREADD システム、コンディショナルノックダウン、マイクロダイアリシス、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション、動物行動解析などを駆使し、脳高次機能と特定神経回路の活動との因果関係の解明を目指しております。