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受賞情報等
2018.07.11

山岸愛実さん(薬物治療学研究室修士課程1年)が第 138 回日本薬理学会関東部会にて優秀発表賞を受賞しました

第 138 回日本薬理学会関東部会 優秀発表賞受賞について

薬物治療学研究室 修士課程 1 年
山岸愛実

 この度、「第 138 回日本薬理学会関東部会」にて優秀発表賞を受賞致しました。このような名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。発表演題名は「Streptozotocin 誘発糖尿病マウスにおける恐怖記憶の変化に対する脳内 AMP 活性化プロテインキナーゼの関与」です。以下に本研究の概要を紹介させていただきます。

 糖尿病は網膜症や腎症、神経障害といった三大合併症をひき起こすだけでなく、糖尿病患者では精神疾患の罹患率も高いことが指摘されていますが、その機序については明らかになっていません。中枢においてグルコースはアストロサイトで乳酸に代謝され、これが神経に供給されてエネルギー源になります。また、乳酸は AMP 活性化プロテインキナーゼ (AMPK) を抑制することから、糖尿病の脳内では乳酸が過剰に産生され、これが AMPK を抑制することで中枢神経機能が変化する可能性が考えられます。これまでに私たちの研究室では、1 型糖尿病モデルの streptozotocin (STZ) 誘発糖尿病マウスでは恐怖記憶が増強することを報告していることから、本研究では、STZ 誘発糖尿病マウスにおける恐怖記憶の増強に脳内の AMPK が関与するか検討を行いました。恐怖条件付け試験を行った結果、STZ 誘発糖尿病マウスではすくみ行動持続率の増加、すなわち恐怖記憶の増強が認められました。次に、恐怖記憶に重要な役割を果たす扁桃体および海馬における AMPK およびその活性化体であるリン酸化 AMPK のタンパク質量を Western blot 法を用いて検討した結果、どちらの脳部位においても STZ 誘発糖尿病マウスではリン酸化 AMPK のタンパク質量が減少していました。さらに、恐怖条件付け試験において、AMPK 活性化薬の AICAR をマウスの脳室内に投与すると用量依存的にすくみ行動持続率は減少し、AMPK 阻害薬の compound C の脳室内投与では、用量依存的にすくみ行動持続率が増加しました。このことから、AMPK は恐怖記憶を抑制的に調節することが明らかになりました。次に、STZ 誘発糖尿病マウスに AICAR を脳室内投与したところ、すくみ行動持続率は有意に減少しました。このことから、STZ 誘発糖尿病マウスにおいて認められた扁桃体および海馬の AMPK の活性低下が恐怖記憶の亢進に関与することが分かりました。以上の本研究の結果から、中枢の AMPK は恐怖記憶に関与し、糖尿病時に認められる扁桃体や海馬の AMPK の活性低下が恐怖記憶の増強をひき起こすことが示唆されました。今後は、さらに研究を発展させて、糖尿病時に認められる中枢神経機能の変化の発現機序を解明していきたいと思います。

 

 最後に、本研究において多大なる御指導、御鞭撻を賜りました薬物治療学研究室教授の池田先生をはじめ、ご協力いただきました皆様に深くお礼申し上げます。

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