第35回和漢医薬学会学術大会 最優秀発表賞受賞について
生体分子薬理学研究室
修士2年 金子未歩
この度、第35回和漢医薬学会学術大会(2018年9月1日、2日;岐阜)にて最優秀発表賞を受賞いたしました。このような栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。受賞演題名は「皮膚アクアポリンの発現に及ぼすチンピ抽出物の影響」です。以下に、本研究の概要を紹介させていただきます。
ヒトには「アクアポリン(AQP)」と呼ばれる水輸送タンパク質が全身に発現しており、体内の水分調節を行っています。皮膚にはAQP3が多く存在し、皮膚の水分保持や皮膚機能の維持に重要な役割を担っていることがわかっています。私たちの研究グループはこれまでに、加齢に伴って皮膚のAQP3の発現量が低下し、これが皮膚乾燥の一因となっていることを明らかにしました。したがって、皮膚AQP3を増加させる物質は、加齢に伴う皮膚乾燥に有用であると考えられます。私は、AQP3の発現増加物質を天然物から発見しようと考え、基礎研究を行いました。
チンピは、ウンシュウミカンの成熟した果皮を乾燥させたものであり、健胃作用などを期待して、六君子湯をはじめ様々な漢方薬に配合されています。近年、チンピ抽出物は、メラニン産生抑制作用やアトピー性皮膚炎抑制作用など、皮膚に対する作用が見出されてきております。そこで、皮膚に対するチンピ抽出物の新たな応用の可能性を探る目的で、皮膚AQP3の発現に及ぼす影響を検討しました。その結果、ヒト皮膚ケラチノサイト細胞株にチンピ抽出物を添加すると、AQP3の発現量が濃度依存的に増加することがわかりました。したがって、チンピ抽出物は加齢に伴う皮膚乾燥に対して有用である可能性が考えられました。
最後に、本研究の遂行にあたり、多大なるご指導・ご鞭撻を賜りました生体分子薬理学研究室の亀井淳三教授、酒井寛泰准教授、五十嵐信智講師、今理紗子特任講師に深く感謝いたします。そして、ご協力くださいました生体分子薬理学研究室の大学院生および卒論生の皆様に心より御礼申し上げます。