第16回Pharmaco-Hematologyシンポジウム 優秀発表賞を受賞して
微生物学教室大学院博士課程
総合薬科学専攻3年 安藤祐介
この度、第16回Pharmaco-Hematologyシンポジウム (日本薬学会生物系薬学部会主催、2015年6月13日:東京)にて優秀発表賞を受賞いたしました。このような栄誉ある賞をいただき大変嬉しく思っております。受賞の発表タイトルは「血小板由来可溶性因子はマクロファージのLPSに対する応答を抑制する」です。
当教室では、微生物と免疫系の戦いをさまざまな角度から研究しています。侵入する微生物を排除する過程では、リンパ球やマクロファージなどの免疫を担当する細胞が互いに協力することが不可欠となっています。これらの細胞の協力関係に重要な役割を担う、伝令役のサイトカインや、細胞と細胞を結びつける細胞接着分子と呼ばれるたんぱく質の構造や機能について、あるいは免疫細胞が微生物を捕捉する食作用のはたらき、微生物側の武器である毒素についても研究の対象としています。
今回、私たちはエンドトキシンショックと呼ばれる症状における血小板の役割に着目しました。エンドトキシンショックは、グラム陰性細菌の全身性感染の結果、細菌の内毒素(エンドトキシン(LPS))に対して体を守ろうとする免疫反応が過剰になり起こる症状であり、3人に1人が亡くなるといわれています。血小板は、赤血球の次に多い血液細胞ですが、最近になって、血小板が減少した動物では、ショックが起こりやすくなることが報告されました。そこで、私たちは、病態に深く関わる免疫細胞であるマクロファージに与える血小板の影響について検討しました。その結果、以下のことが明らかとなりました。①血小板とともに培養したマクロファージは、エンドトキシンに対して応答しにくくなる。②このようなマクロファージの性質の変化には血小板との接触は必ずしも必須ではなく、血小板から放出される可溶性因子が重要である。これらの結果から、エンドトキシンに対するマクロファージの応答が、血液中に豊富に存在する血小板からの因子により調節されていることが考えられます。
今後、この因子の実体を解明するとともに、マクロファージの性質の変化の分子メカニズムを解析することにより、エンドトキシンショックの機序の解明、そして治療への応用を目指したいと考えております。最後に、本研究の遂行にあたり、多大なるご指導、ご鞭撻を賜りました微生物学教室の辻勉教授、奥輝明助教に深く感謝いたします。また、ご協力くださいました築地 信准教授をはじめとする微生物学教室の皆様に心より御礼申し上げます。