日本薬学会第143年会 学生優秀発表賞を受賞して
薬学科3年 機能形態学研究室(現所属:薬学教育研究部門) 豊田 美郷
※受賞当時(2023年3月時点)の学年及び所属
日本薬学会第143年会(2023年3月25~28日)にて、学生優秀発表賞(口頭発表)を受賞致しました。受賞の発表タイトルは 「Spontaneously hypertensive rat 摘出上腸間膜動脈における uridine triphosphate 誘発弛緩反応」 です。機能形態学研究室に所属していたときの成果となります。このような素晴らしい賞を頂きまして、非常に光栄に思います。以下に研究の概要を簡単に紹介させていただきます。
アデノシン三リン酸(ATP)やウリジン三リン酸(UTP)といった細胞外核酸は、情報伝達物質として働くことが知られ、組織損傷を免疫系に警告する危険システムとしても働くなど病態形成に関わり、また循環器系、代謝系においても高血圧や糖尿病などの病態生理に重要な役割を果たし、血管緊張調節物質として働くことが知られております。また、持続的な高血圧は血管機能障害を誘発し、種々の血管作動性物質による収縮や弛緩といった反応性を変化させることが知られている一方で、上腸間膜動脈におけるUTPによる弛緩反応については未だ不明であったことから、今回、SHRおよびWKYの上腸間膜動脈を用いて、UTP誘発弛緩反応について検討を行いました。また、弛緩反応に関与することが知られているTRPV4チャネルがUTP誘発弛緩反応に関与するかについて検討致しました。
その結果、内皮保持におけるUTP誘発弛緩反応、およびNOS/COX阻害条件下でのUTP誘発弛緩反応は、TRPV4阻害の有無によらず、WKY群と比較してSHR群において弛緩の減弱が認められました。また、内皮保持におけるNOS/COX阻害条件下によるTRPV4アゴニスト誘発弛緩反応ではSHR群において弛緩の減弱が認められました。以上のことからSHRの上腸間膜動脈においてUTP誘発弛緩反応、TRPV4活性化による弛緩反応は減弱するものの、これらの弛緩反応はそれぞれ独立して生じるものであること、UTPによるEDHF様弛緩反応においてはTRPV4を介さずに生じることが明らかとなりました。
今後はこれらの詳細なメカニズムや弛緩反応の減弱に関与する物質および受容体レベルでの検討を行い、さらにこれからの治療への発展を見据えていきたいと考えております。最後に、本研究の遂行にあたり、多大なるご指導、ご鞭撻を賜りました機能形態学研究室の小林恒雄教授、松本貴之教授 (現 薬学教育研究部門)、そしてご協力くださいました、機能形態学研究室の田口久美子講師をはじめとする機能形態学研究室の皆様に心より御礼申し上げます。