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受賞情報等
2023.04.27

小浪 なおこさん(薬学科5年 薬品物理化学研究室 )が日本薬学会第143年会 学生優秀発表賞を受賞しました

日本薬学会第143年会 学生優秀発表賞を受賞して

薬学科5年 薬品物理化学研究室 小浪 なおこ
※受賞当時(2023年3月時点)の学年

 日本薬学会第143年会(2023年3月25〜28日)にて、学生優秀発表賞(口頭発表)を受賞致しました。受賞の発表タイトルは「計算科学的手法を用いたssPalmナノ粒子の構造および相互作用評価」です。このような素晴らしい賞を頂きまして非常に光栄に思います。以下に研究の概要を紹介致します。

 核酸医薬は、次世代のがんや遺伝性疾患に対する革新的な治療薬として期待されていますが、生体内での不安定性や細胞膜への透過性が低いことから、組織への効率的な送達が課題となっています。そのような解決手段の一つとして、Drug Delivery Systemである脂質ナノ粒子(LNP)の開発が行われています。LNPの開発には微細構造の理解が不可欠ですが、実験だけでは十分な情報を得ることは困難です。本研究では、分子シミュレーションを用いることで、LNPの構造や相互作用を評価しました。
 ssPalmは核酸送達を目的に開発された脂質様材料で、LNPを形成します。ssPalm-LNPでは、コレステロールを含有させた際、40mol%以上を境に遺伝子導入効率が上昇することが分かっていますが、その際のLNPの構造は不明です。分子シミュレーションにより、コレステロールは40mol%以上においてクラスターを形成し、水酸基が水相側を向くことが確認できました。このクラスターが遺伝子導入効率の上昇に関与していると考えられます。
 また、ssPalmは、脂溶性足場であるオレイン酸と親水基である第三級アミンをもち、その間をつなぐリンカー部の違いに依存して遺伝子導入効率が変化します。リンカー部へのベンゼン環の導入は、遺伝子導入効率を上昇させることが分かっています。分子シミュレーションによる相互作用解析の結果、リンカー部にベンゼン環をもつ脂質を用いた際のLNPは、ベンゼン環をもたない脂質を用いたLNPと比較して、LNP内部における脂質-脂質間相互作用が大きいことが分かりました。また核酸をLNPに添加した際、ベンゼン環の導入によって、脂質-核酸間相互作用が低下することが分かりました。
 今後は、上記のような構造や相互作用を評価する手法が、LNPを形成する脂質の設計やLNPにおける脂質の最適組成の検討に役立てることを目指していきます。

 最後に、本研究の遂行にあたり多大なるご指導、ご鞭撻を賜りました薬品物理化学研究室の米持悦生教授、古石誉之講師をはじめとする薬品物理化学研究室の皆様、また大阪大学薬学部薬学研究科量子情報薬学分野の福澤薫教授、東北大学大学院薬学研究科薬物送達学分野の秋田英万教授、田中浩揮助教に心より御礼申し上げます。

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