第9回 日本緩和医療薬学会 優秀発表賞を受賞して
実務教育研究部門 鳥越 一宏
平成27年10月3日 ~ 4日に横浜で開催されました第9回日本緩和医療薬学会におきまして、『オピオイドの副作用マネジメントに用いる抗精神病薬の薬理学的プロファイリング比較』という演題名で優秀発表賞を受賞いたしました。以下に受賞の対象となった研究内容の概略を紹介させていただきます。
オピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)の主な副作用である吐き気は食欲不振を招くのみならず薬を拒むことへとつながり、痛み治療の妨げとなることがあります。この対策として国内外のガイドラインではプロクロルペラジンなどの定型抗精神病薬が第一選択薬として位置付けられていますが、それ自身の副作用である錐体外路症状(薬剤性パーキンソン様症状)や、意欲の低下などが懸念され、さらにその対策薬が追加されてしまう事例も考えられます。
そこで本研究では、薬理学的手法を用いてプロクロルペラジン、ブロナンセリン、オランザピンの薬理プロファイリング(制吐作用、消化管運動への影響、精神依存形成抑制作用、血糖変動、錐体外路症状)を対照群との比率をもとにレーダーチャートにプロットすることで比較し、より有効かつ安全な選択肢となり得る薬剤を探索しました。
その結果、制吐作用ではブロナンセリンが優れており、錐体外路症状も軽度であることが示されました。また、ブロナンセリンは精神依存形成の抑制作用を示し、消化管運動および血糖値への影響は認められませんでした。これらの結果から、ブロナンセリンがプロクロルペラジンに変わる薬剤として、今後位置付けられることが期待されます。
今後も、オピオイド鎮痛薬の適正使用を推進する根拠を基礎と臨床の双方から提示することをテーマとし、研究を遂行したいと考えています。最後になりますが、本研究の遂行にあたり多大なるご指導・ご助言を賜りました成田年 教授、鈴木勉 特任教授、櫻井正太郎 教授をはじめとした先生方に厚く御礼申し上げます。また、共同研究者の方々に心より感謝申し上げます。