第 89 回日本薬理学会年会 学生優秀発表賞を受賞して
薬理学教室 薬学部 6 年 有馬 崇充
第 89 回日本薬理学会年会 (2016 年 3 月 9~11 日) にて、学生優秀発表賞を受賞致しました。受賞の発表タイトルは「数種 μ-オピオイド受容体作動薬の細胞内陥入を指標とした分子薬理学的プロファイリング」です。このような栄誉ある賞を頂けて非常に光栄です。以下に研究の概要を紹介させていただきます。
μ オピオイド受容体作動薬は、共通の μ オピオイド受容体を介して生理応答を示すものの、鎮痛作用の強弱や副作用の発現において個々の作動薬間に多様な違いが存在します。さらに、μ オピオイド受容体のような G タンパク質共役型受容体に対する各リガンドの分子薬理学的評価において、「同じ受容体作動薬に分類されても、個々のリガンドによってそれぞれ異なる細胞内シグナル伝達経路を活性化する」という ″ Ligand-biased efficacy ″ 説という新しい理論の理解が重要であると認識されてきております。そこで本研究では、μ オピオイド受容体作動薬の個々の特性を分子薬理学的に理解する目的で、G タンパク質依存的経路あるいは G タンパク質非依存的経路に着目して、それぞれのリガンドの評価を行いました。その結果、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルおよびメサドンなどの μ オピオイド受容体作動薬は、それぞれ固有のシグナル応答を示すことが明らかとなりました。さらに、μ オピオイド受容体の G タンパク質バイアスドリガンドである TRV130 および既存の μ オピオイド受容体作動薬であるフェンタニルを併用することによる下流シグナルへの影響について検討を行ったところ、フェンタニルにより誘発される G タンパク質非依存的経路の活性の抑制が認められました。今後も、こうした研究をさらに発展させることで、オピオイドローテーションなどにおいて異なる種類のオピオイドを併用する際に重要な情報を提供することが可能であると考えられます。
最後に本研究の遂行にあたり、多大なるご指導を賜りました薬理学教室の成田年教授をはじめ、薬理学教室の先生方に厚く御礼を申し上げます。