第10回日本緩和医療薬学会 優秀発表賞を受賞して
薬理学教室 薬学部5年 西川 諒
第10回日本緩和医療薬学会(2016年5月3~5日;浜松)にて、優秀発表賞を受賞しました。このような栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思っております。受賞演題名は「医療用麻薬の薬理作用や耐性/依存性のメカニズムを理解するためのμオピオイド受容体分解機構の解析」です。以下に本研究の概要を紹介させていただきます。
麻薬性鎮痛薬であるオピオイド鎮痛薬は、μ-オピオイド受容体を介し、その薬理作用を発現しています。このμオピオイド受容体は、刺激を受けることによって細胞内に陥入し、再感作されるものの、一部の受容体は分解、代謝を受けることによりオピオイド鎮痛薬の薬理作用が修飾を受けると考えられています。現在までにμオピオイド受容体の細胞内陥入に対する研究は数多くなされておりますが、一方で細胞内におけるμオピオイド受容体の分解に関しては未だ詳細なメカニズムは明らかとなっておりません。そこで本研究では、医療用麻薬の薬理作用や耐性/依存性のメカニズムの理解を深めることを目的とした、μオピオイド受容体の代謝回転およびオピオイド鎮痛薬によるμオピオイド受容体の分解促進ならびにその機序について検討を行いました。その結果、μ受容体は非刺激時においても常に分解と生合成が起こっていること、また、μ受容体作動薬によって分解促進がさらに促進され、この機序には、リソソーム、プロテアソームが関与していることを明らかにすることが出来ました。さらに、オピオイド受容体作動薬であるモルヒネ、オキシコドンならびにフェンタニル間で分解における機序が異なること、また、これらの過程においてAktならびにGSK-3βの脱リン酸化が、関与していることも証明することも出来ました。
以上、本研究より、μ受容体は常に生合成と分解が繰り返し行われており、μ受容体の刺激により、さらにμ受容体の分解が著明に促進されることを明らかにすることができ、さらにそのメカニズムを明らかに致しました。今後、これらの機序を詳細に検討することにより、オピオイドによる鎮痛耐性ならびに依存という状態の解明に繋がることを、期待しております。
最後に本研究の遂行にあたり、多大なるご指導を賜りました薬理学教室の成田年教授、森友久准教授をはじめ、薬理学教室の先生方に厚く御礼を申し上げます。