薬はいつ、どれだけ飲めばいいのだろうか。薬は適量を飲めば目的とする効果をあげられるが、過剰になれば副作用というかたちで体に害を及ぼすものになる。
薬動学の研究目的は薬物の体内動態、つまり服用した薬の吸収、分布、代謝、排泄を総合的に研究し、個々の患者への適正な用法・用量を決定するところにある。
「薬といえども体にとっては異物であり、体にはそれを排除しようとするメカニズムが備わっています。服用した薬は血中に吸収される時に、まず肝臓を通過しますが、その時に一部が代謝されます。代謝されなかった薬は体内をめぐってまた肝臓にもどり、同じことが繰り返されます。新しく開発された薬や問題が生じた薬の肝臓での分解の様子、体内での分布の様子、排泄までの時間などを調べ、薬が適正に使用されるための基礎データを提供しようと考えています。」(杉山教授)
近年、高齢化や複数の慢性疾患の併発などにより、単一の薬剤での治療は困難となり、複数の薬を併用せざるを得ないケースが多くなってきている。併用薬の数が増加すると、薬物間相互作用が起こりやすくなる。薬物間相互作用は、体内動態のいずれの過程においても起こる可能性があり、相互作用が起こると、体内の薬物濃度が上昇し副作用が発現したり、また逆に薬物濃度が減少することにより薬物が効果を発揮しないことがある。
当教室ではこのような薬物の体内動態やその変動要因について、動物や細胞を用いた基礎研究を行っている。また、いくつかの病院の薬剤部や保険薬局と共同研究を行うとともに、常に臨床現場とつながりを持ち、情報交換を行っている。
今後も、大学と臨床現場の架け橋となり、患者さんのためとなる臨床に近い研究を行っていくことを目指している。