呼吸や食事をすることで、われわれの体は常に細菌やウイルスを取り込んでいる。それでも病気にならないのは、体に防御体制があるためだ。病原菌の感染を防ぐのはおもに免疫細胞(白血球の仲間たち)の役目。白血球は血流にのって体中をパトロールし、細菌やウイルスの侵入など異常を発見すると血管から出てきてそれらを退治する。
「なぜ血液中の白血球が異常を感知し、どうやって血管から出てくるのか、その仕組みを研究しています」(辻教授)
細菌が発するある種の信号のような物質を、走化性因子という。これを感知して白血球が働きを開始する。さらに白血球が血管から出てくるためには、まず血流に逆らって血管壁に密着する必要がある。その働きを助けるのが接着分子という物質で、白血球の足場の役目を担う。
「白血球の働きの仕組みを解明することで、感染予防や、過剰な防衛反応として起こる炎症アレルギー反応をコントロールする医薬品開発につながると考えています」