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検疫の最前線で、見えない脅威から日本を守る。薬学の“幅広さ”が、空と海の水際で武器になる。

東京都立北園高等学校出身
薬学科2019年度卒業
【公務員】老川 浩太郎さん
勤務先:厚生労働省 食品衛生監視員
(2026年2月取材当時)
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入学時の将来像

薬剤師になるのだろう——漠然とした思いから始まった大学生活、
「面白い」と感じた分野が、未来を拓いた。

入学当初は、薬剤師になるのだろうと漠然と考えていました。しかし大学で学ぶにつれて、物理・化学・生物といった基礎科目や、社会を守る衛生分野に強く惹かれるようになりました。国家試験の勉強では敬遠されがちな分野かもしれませんが、私にとってはむしろ「面白い」と感じる領域でした。こうした分野と深く関わる仕事を探すうちに、公務員という選択肢が見えてきました。
決め手となったのは、研究室の2年先輩が検疫所で食品衛生監視員として活躍されていたことです。先輩の話を通して「薬剤師の知識が求められる場所で、自分の興味ある分野を強みに生かせる仕事だ」と感じました。さらに、数年ごとの異動で多様な業務を経験できる点も大きな魅力でした。薬剤師が多くいるなかで、あえて薬剤師以外の道を歩む——そんな独自路線に惹かれ、今の仕事を選びました。

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学生時代に得た経験

薬物依存の研究に没頭した日々。
研究室で培われた"伝える力"と"挑戦する力"。

卒論研究は薬理学研究室を選びました。入学前から薬物依存という分野に興味があり、それを深く学べる環境を求めていたからです。研究室の先生方のもとで、薬物の作用メカニズムに関する研究に取り組みました。
当時何気なく使っていた薬品の値段を知ったとき、自分がいかに恵まれた環境で研究していたのかを実感しました。最新の設備が整った中で研究に打ち込めたことは、自分で費用を負担していては到底できない貴重な経験だったと感じています。好奇心を原動力に、本格的な研究に挑戦できるのは学生時代の特権。学生の「やりたい」という気持ちに全力で応えてくれる——星薬は、そういう大学でした。
朝から晩まで実験室で過ごす濃密な日々の中で、実験ノートを丁寧に記録し、異変があればすぐに先生へ報告し、専門的な工程が必要になれば他の班の先生方や大学院生に協力を仰ぐ——そうした一つひとつの積み重ねが、社会に出てからのコミュニケーションの土台になっていたと、今になって実感しています。
忙しい相手に要点をどう伝えるか、自分の考えをどう言語化するか。こうした経験は、今の職場で異なる専門性を持つ組織と連携する際に、確実に生きています。学生の意見を「一人の研究者の意見」として受け止め、真剣に議論してくださる先生方のもとで学んだ経験が、今につながっています。卒業後もSNSでやり取りを続ける中で、昨年、公務員志望の後輩に向けたアドバイスも兼ねて、久しぶりに研究室を訪問しました。その際先生からは、「当時取り組んでくれた研究が、今こうして論文の形になっているよ」とデータを見せていただきました。自分の研究が次の世代へつながっている、その事実に驚きと喜びを覚えました。

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社会で咲いたイチバン星

空港のサーモグラフィー、港での衛生検査、蚊の同定
——水際で"見えない脅威"と向き合う日々。

現在は食品衛生監視員として検疫所に勤務し、主に検疫業務に携わっています。検疫所の拠点は港や空港。業務内容は多岐にわたります。
空港では、国際線で入国する方々の健康状態をサーモグラフィーで確認し、体調不良を申し出た方への聞き取りを踏まえ、感染症の疑いがないかを判断します。港では、入港する船舶に対して無線での検疫審査を行い、乗組員の健康状態を書類で確認します。さらに、船舶の衛生検査として実際に船内に入り、食堂などで害虫や衛生上の問題がないかを調べることもあります。
技官としての専門業務の一つに、蚊の同定があります。港や空港の周辺で蚊のトラップを設置し、捕獲した蚊を一匹ずつ顕微鏡で観察して種類を見極めます。蚊の種類によって媒介する感染症が異なるため、デング熱などの対策につながる重要な工程です。さらに、外来種の侵入がないかを監視する役割も担っており、水際で感染症の拡大を防ぐ最前線に立っています。
入職して間もなく、新型コロナウイルスの対応も経験しました。感染症は目に見えません。しかし、科学的知見をもとに、いつ、どこから、どの経路で入ってきたのかをたどることができる——そこに、この仕事の大きな醍醐味があります。

薬学部で身につけた"幅広い学び"が、
現場で最大のアドバンテージになる。

薬学部では物理・化学・生物・衛生・薬理と、あらゆる分野を一通り学びます。そのため、検疫所のどの業務に配属されても「一度は触れたことがある」という状態からスタートできる点は、この幅広い学びの強みです。実際、私も入職当初は大学時代の教科書を復習することで、スムーズに業務へ適応することができました。こうした知識の土台に加え、日々の業務を支えているのが、大学時代に身についた「正確さへの姿勢」です。例えば検査業務では、ミスをいかに減らすかという意識が常に求められます。ピペットの目盛り確認の回数やタイミングなど、細やかな注意力は、研究室で積み重ねてきた実験を通じて自然と身についたものでした。一人の患者さんに寄り添う薬剤師も素晴らしいですが、日本全体に関わるスケールで、自分の知識を活かして人々の健康を守る――それが、この仕事のやりがいです。
薬学部と聞くと病院や薬局で働く姿を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実際には多彩な選択肢があります。大切なのは「薬学を学びたい」という思いに加えて、「その知識をどう活かしたいか」という自分なりの軸を持つことです。「目の前の患者さんに寄り添いたい」でも、「研究を究めて専門性を高めたい」でも構いません。私の場合は、「薬学の専門性を武器に社会に貢献したい」という思いが、今の仕事へと導いてくれました。
星薬は、少人数だからこそ人とのつながりが自然と生まれやすい大学です。グループ学習や選択科目を通じて切磋琢磨できる仲間と出会い、研究室では先生方と深い信頼関係を築くことができます。この温かくも成長できる環境の中で、皆さんもぜひ、自分の可能性を大きく広げてください。

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