小学生の頃に通っていたそろばん教室に、子供向けの仕事紹介の本が置いてありました。そこには、計算力が必要な仕事として薬剤師が紹介されていたのです。そろばんを習い算数が得意だった私は、自分の得意分野を活かせる仕事だと感じました。さらに、手術など直接的な医療行為は怖いけど、薬を通じて人々の健康に貢献できることはステキだなと興味を持ったことが、薬剤師という職業への憧れの原点です。その思いを中学、高校と育み、薬学部へと進学しました。
入学前から星薬は“研究に力を入れている大学”というイメージがあったので、私も進学したら薬剤師としての勉強だけでなく、いろいろな実験や研究がしたいと思っていました。星薬の1年次早期から行われる実習では、実験を通して実践的に薬学を学びます。与えられる課題は高校の実験とは全く異なり、専門的で難しく、簡単には成功できないものばかり。同じ実習班になった同級生と意見を出し合い、チームで最適な実験手法を求めて試行錯誤することが当たり前になっていきました。また自らの手を動かすことで、座学で学んだ様々な知識が体系的に整理され、実力が付いていくのを実感できました。
さらに、高学年次に所属する“研究室”では、まだ誰も答えを知らない独自の研究テーマを追究することができます。私は生薬学研究室に所属し、植物から特定の物質を発見するための新たな手法を確立するというテーマを持って日々研究に励みました。研究といっても、一人で実験器具を前に黙々と考えるだけでなく、先生方や他の学生と意見を交わし合う機会が日常的にあります。そうした中で、難しい研究の話でもわかりやすく伝えるようにと先生から指導を受け、相手の立場に立って自分の考えをまとめる力を磨きました。
また、オープンキャンパススタッフとしてキャンパスツアーガイドをしたことも、忘れられない貴重な経験です。高校生に星薬の魅力を伝える中で、相手の立場に立って考え、説明することの大切さを実感しました。
こうした経験の一つひとつが、現在の患者さんへの服薬指導に活かせていて、薬剤師業務における私の強みとなっています。星薬科大学での6年間は、薬剤師になるための学びと現在の基盤を築く、かけがえのない時間でした。
現在、なの花薬局の薬剤師として働いています。担当している店舗周辺は住宅も多い地域なのですが、近くに病院が多いため主に処方箋の調剤業務で薬局を訪れる近隣の患者さんの日々の健康を支えています。
最近ではSNSを活用して患者さんとコミュニケーションを取り、服薬指導や健康相談に応じることも増えています。子育て中のお母さんに赤ちゃんへの薬の飲ませ方をアドバイスし、後日、「うまくいきました」とご連絡をいただいた時は、安心を届けることができたなと大きなやりがいを感じました。
また、なの花薬局では在宅医療にも注力をしています。医師と同じように患者さんの症状や生活環境を把握し、服薬の確認をするカレンダーを作ったりと工夫をしながら、薬を適切に飲み続けられるようサポートしています。
今、薬局薬剤師に求められる役割を果たすためには患者さんとのコミュニケーション能力がとても重要となっています。そういった点で、患者さんの立場に立って考え、どうすれば健康な生活を支援できるかという視点を磨くことができた星薬での学びは、私にとって知識の習得以上に価値のあるものでした。
子どものころ、漠然ともった薬剤師への憧れでしたが、今ははっきりと目指す薬剤師像が見えています。それは、多くの先輩たちのように患者さんから「あなたに相談できて良かった」と言っていただくことです。その目標に向かって、星薬での学びとともに、地域に根ざした薬剤師として、一人でも多くの患者さんの健康をサポートできるよう日々努力しています。