原点は小学生の頃の募金活動。「そのお金が途上国の子どもたちの薬にも使われる」と知り、薬が世界の人々に広く影響を与えることに衝撃を受けました。世界中のあらゆるところで、薬が人の命を救う事実に惹かれ、「創薬に関わりたい」という思いが芽生えました。大学を選ぶ決め手となったのは、創薬科学科の少人数制と先生との距離の近さです。授業や研究で質問がしやすく、先生の研究室のドアをノックすればすぐに相談できる。そんな学びの環境を理想として描いていましたが、入学後、それがまさに現実となりました。
創薬科学科で印象的だったのは、『レギュラトリーサイエンス』という授業です。この講義では、厚生労働省や法務関係など、薬剤師とは異なる立場から薬を扱う専門家の方々から直接お話を伺う機会がありました。これらの授業を通して、創薬研究に携わるだけでなく、多様なキャリアの道があることを知ることができました。また、学んだ内容を踏まえて自分のキャリアプランを発表する授業もあり、非常に有意義でした。入学当初は漠然と「研究がしたい」と思っていましたが、この授業を通じて、「品質管理」という分野にも強く興味を持つようになりました。特に関心があるのは、化粧品をはじめとする日常生活に身近な化学製品の品質管理です。これらは人々の生活に密接に関わるものであり、人の健康や安全を守る上で重要な仕事だと感じています。また、化学物質の生物への影響評価や成分濃度の測定など、これまで学んできた薬学の知識が活かせる分野でもあると実感しています。
3年次からは薬動学研究室に所属し、本格的な研究活動が始まりました。私の研究テーマは「妊娠中に服用した薬が胎児脳の発達(神経幹細胞から神経細胞への分化)にどのような影響を与えるか」です。胎児期の脳には、神経細胞を生み出す基盤となる神経幹細胞が豊富に存在しますが、薬物による影響については未解明な部分が多く残されています。
研究に用いる神経幹細胞は非常に繊細で、免疫染色という手法で細胞の状態を可視化しますが、素早く丁寧に作業しなければ、細胞にストレスがかかり正確な評価ができません。
3年次の1年間はこうした基礎技術の習得に専念しました。配属当初と現在の実験データを比べると、再現性の高い結果を得られるようになり、確かな成長を実感しています。
最近では、特定の薬物が胎児の神経幹細胞から神経細胞への分化にどのように影響するかを解析できるまでになり、その達成感が研究の楽しさにつながっています。
学部4年を一区切りにせず、修士課程への進学を選びたいと考えています。私は、ゼロから革新を生むタイプというより、既存の知を発展させて確かな答えを積み上げるタイプだと思っています。そうした自分の適性を見きわめたうえで、研究という「今しかできない2年間の深掘り」に価値を感じたからです。将来は、医薬品開発に限らず、先ほど話した日用品・化学製品の品質管理や、公的機関での衛生・安全評価の仕事も視野に入れています。研究で培った論理性・再現性・エビデンス設計は、どの進路でも必ず武器になると確信しています。
大学院での2年間、さらに研究に没頭できる時間があることに、今はワクワクしています。自分の手で新しい発見をする。その喜びをもっと味わいたい。星薬科大学には、そんな私の思いに応えてくれる環境が整っています。
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