星薬科大学(牛島俊和 学長)、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院(阿部清一郎 内視鏡科医長ら)からなる研究チームは、ピロリ菌除菌後健康人において、発がん前の胃粘膜組織のDNAメチル化異常を測定することにより、初発胃がんリスクを精密に予測できることを多施設共同前向き研究により明らかにしました。本研究の成果は、国際総合学術雑誌「Gut」に発表されました(報道解禁 4月16日12:00 日本時間)。
【研究成果のポイント】
【研究内容】
発がん前の組織のDNAメチル化異常の測定により、初発胃がんリスクを予測
DNAメチル化異常の測定により、健康人で初発胃がんリスクを予測できることを証明するために、ピロリ菌除菌後健康人を対象として多施設共同前向き研究を行いました(UMIN-CTR000016894に登録)。今回の研究では、ピロリ菌除菌後でも臨床的に胃がん高リスクと考えられ、新たな対策が必要とされる可能性がある開放型胃粘膜萎縮を持つ健康人を対象としました。参加者の方に研究内容について説明しご同意いただいた後、胃前庭部および体部の2か所から胃粘膜の生検をさせていただきました。生検自体は、保険診療での組織検査の際に普通に実施されている手法です。採取した検体由来DNAを用いて、胃がんリスクマーカーRIMS1遺伝子のDNAメチル化レベルの測定を行いました。その後、5年間、毎年内視鏡検査により胃がんの検査を行いました。
1,757名の方について生検を行い、内視鏡観察が始まり、そのうち1,624名が1回以上の追跡を受けてくださいました(追跡期間の中央値 = 4.05年)。このうち27名の方に胃がんが発生しました。1回以上の追跡を受けた1,624名の方をRIMS1メチル化レベルにより4つの群に分け、胃がんとの関連について解析を行ないました。その結果、メチル化レベルが最も高かった1/4の人たち(Q4)は、最も低かった1/4の人たち(Q1)に比べて、初発胃がん発生リスクが7.7倍高いことがわかりました。
高リスクな集団の中でもさらに超高リスクな集団を特定
本研究の対象者は全員、臨床的に高リスクとされる開放型胃粘膜萎縮を有する健康人です。その中でも特にリスクの高い超高リスク群を特定することを試みました。対象者におけるRIMS1メチル化レベルと胃がん発生率の関係を計算し、RIMS1のメチル化レベルが25.7%を超えると、1年間で胃がんを発生する頻度が急速に増加しており、超高リスクと考えられました。この超高リスクの人たちには、2年に一度の経過観察よりも、がんが発生したとしても内視鏡治療が可能なうちに発見が可能になると予測されるため毎年の経過観察が推奨される可能性が高いと考えられます。
【今後の展望】
本研究により、ピロリ菌除菌後の健康人において、発がん前の胃粘膜組織におけるDNAメチル化レベルを測定することで初発胃がんのリスクを予測できることが、世界で初めて前向き研究により証明されました。また、超高リスク集団を同定するためのメチル化レベルを決定することにも成功しました。
これらの研究成果より、以下のことが、直接的、間接的に期待されます。
【論文タイトル】
Precision risk stratification of primary gastric cancer after eradication of H. pylori by a DNA methylation marker: a multicenter prospective study
【掲載誌】
国際総合学術雑誌『Gut』
doi; https://doi.org/gutjnl-2025-335039
【問い合わせ先】
研究に関するお問い合わせ先
星薬科大学
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学長 牛島俊和
Eメール:tushijima142@hoshi.ac.jp 電話番号: 03-5498-5838 (学長室)
機関窓口
星薬科大学 総務部
Eメール:somu@hoshi.ac.jp 電話番号:03-5498-5978 (総務部)