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研究
2025.02.06

児玉耕太教授らの稀少疾患ドラッグラグに関する研究成果が学術誌に掲載され、内容が報道されました

希少疾患に関する研究開発環境の変化により、 希少疾患薬のドラッグラグが再拡大していることを示唆

 

星薬科大学の児玉耕太教授らの研究グループは、名古屋市立大学、立命館大学及び東京科学大学との共同研究により、希少疾患領域におけるドラッグラグ 注1)の現状及び研究開発モデルの変遷を分析し、日本における希少疾患薬のシームレスな開発及び革新的な治療への迅速なアクセスを確保するための方策を検討しました。その結果、希少疾患薬のドラッグラグは規制当局及び産業界の様々な取り組みにより大幅に改善されましたが、近年再び拡大する懸念が高まっており、その背景には、欧米の新興企業の台頭や医薬品業界の変革に伴う製薬企業の研究開発戦略の変化があることを明らかにしました。また、ドラッグラグ解消のためには、日本企業が欧米の新興企業とより早期かつグローバル規模のパートナーシップを積極的に構築し、日本を含む世界同時開発を推進することが重要であることを示しました。
この成果は、2月5日に学術誌『クリニカルファーマコロジー&セラピューティクス(Clinical Pharmacology & Therapeutics)』に発表され、2月12日日経新聞夕刊等で報道されました。

 

【研究成果のポイント】

  1. 希少疾患は希少性ゆえに社会から見逃されがちであり、大きなアンメットメディカル二-ズが存在する。日本は長年にわたりドラッグラグに直面しており、近年では医薬品研究開発の主体が欧米の新興企業へ移行する中、ドラッグラグの拡大が懸念される。
  2. 米国で希少疾患薬の開発が加速している一方で、日本ではドラッグラグが再び拡大する懸念が高まっている。その背景には、欧米の新興企業の台頭や医薬品業界の変革に伴う製薬企業の研究開発戦略の変化があることを明らかにした。
  3. 米国では日本に事業基盤を持たない新興企業によって開発される希少疾患薬が増加しており、日本企業はこれらの企業から、米国での開発が後期段階に達した薬剤を日本市場向けに導入し、ブリッジング戦略 注2)を用いて日本で開発するケースが増加している。この動向がドラッグラグ拡大の主因となっている。
  4. 欧米の新興企業が日本へ事業拡大する可能性は低く、希少疾患薬のドラッグラグ解消のためには、日本企業が欧米の新興企業と早期かつグローバル規模のパートナーシップを積極的に構築し、日本を含む世界同時開発を推進することが重要である。

 

 

【概要】

 星薬科大学薬学部医療データサイエンス研究室の児玉耕太教授(責任著者、北海道大学客員教授、立命館大学教授)、蔭山逸行助教と小林由幸客員研究員は、塩谷和昭(名古屋市立大学)、林永周准教授(立命館大学)、仙石慎太郎教授(東京科学大学)らとの共同研究で、希少疾患領域のドラッグラグ 注1)の現状及び研究開発モデルの変遷を分析し、日本における希少疾患薬のシームレスな開発及び革新的な治療への迅速なアクセスを確保するための方策を検討しました。
 この結果、米国で希少疾患薬の開発が加速する一方、日本ではドラッグラグが再び拡大する懸念が高まっており、その背景には、欧米の新興企業の台頭や医薬品業界の変革に伴う製薬企業の研究開発戦略の変化があることを明らかにしました。特に、米国で日本に事業基盤を持たない新興企業によって開発される希少疾患薬が増加する中、日本企業はこれらの企業から、米国での開発が後期段階に達した薬剤を日本市場向けに導入し、ブリッジング戦略 注2)を用いて日本で開発するケースが増加しており、これがドラッグラグ拡大の主因となっていることが明らかとなりました。
 これらの結果から、希少疾患薬のドラッグラグ解消のためは、日本企業が欧米の新興企業とより早期かつグローバル規模のパートナーシップを積極的に構築し、日本を含む世界同時開発を推進することが重要であることが示されました。この成果は、近年公衆衛生上の重大な課題として注目されているドラッグラグの根本的な原因と対処すべき課題を提起しており、ドラッグラグ解消に向けた重要な一助となることが期待されます。
 研究成果は2025年2月5日にワイリー社の学術誌『クリニカルファーマコロジー&セラピューティクス(Clinical Pharmacology & Therapeutics)』オンライン版に掲載されました。

 

注1)ドラッグラグ

他国と比べた日本での医薬品承認の遅れ。日本において治療上重要な医薬品が利用できない状況が生じるなど医療上の重大な問題とされている。

 

注2)ブリッジング戦略

日本で小規模な臨床試験を実施し、日本人と非日本人の治療反応性の類似性を証明することで、海外で実施された第3相試験(検証試験)の成績を日本での承認申請データとして活用する戦略と定義。一般に、海外の第3相試験の良好な結果を確認した後に日本での開発が開始されるため、他国に比べて日本で承認申請が遅延しドラッグラグが拡大する。

 

 

【プレスリリース資料】

【掲載記事】

 

【論文タイトル】
Evolving Research and Development Landscape for Rare Diseases: Growing Concerns over Orphan Drug Lag in Japan
変革する希少疾患治療薬の研究開発:拡大するオーファンドラッグラグ

【掲載誌】
学術誌『Clinical Pharmacology & Therapeutics』
doi:10.1002/cpt.3553

 

【問い合わせ先】
<研究に関すること>
星薬科大学薬学部・医療データサイエンス研究室
教授 児玉 耕太 (KODAMA Kota)
E-mail:kodama.kota[at]hoshi.ac.jp

 

<報道に関すること>

星薬科大学イノベーションセンター
部長 吉田秀保
〒142-8501東京都品川区荏原2-4-41
E-mail:h-yoshida[at]hoshi.ac.jp

 

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